研究内容
感染症の科学
感染症の問題は、時代とともに変わってきています。感染症は臓器によらず、全ての診療領域で遭遇する疾患で、診断・治療に加えて、予防・疫学に関する知識が必要と考えます。
薬剤耐性菌、新興・再興感染症などの病原微生物が進化・多様化し、宿主要因により影響を受けています。感染症は個人だけではなく、施設や社会で拡大する可能性があり、感染制御の知識・実践が必要と考えます。また、感染症はグローバル化、ボーダレス化しており、世界規模での対策が重要と言えます。

感染症の防止のために
高頻度の接触面を持つ環境では、薬剤耐性菌が長期間生存しやすく、医療関連感染症の原因となることがあります。
耳鼻咽喉科・頭頸部外科の診察では、診療ユニットを使用し、患者様に直接接触しながら診察を行います。さらに、喉頭ファイバースコープ検査や、エアロゾルが飛散する気管孔周囲の処置、手術後の創部処置が日常的に行われています。
このような診察や処置中に、診療ユニットや医療従事者の手指に薬剤耐性菌が付着し、他の医療従事者や患者様に伝播するリスクが懸念されています。
感染症予防のためのデータ構築
近年、従来の手動清掃を補う方法として、UV照射や過酸化水素蒸気システムなどの非接触型消毒法が導入されています。特にUV-C装置を使用することで、環境表面の微生物を大幅に減少させ、医療環境の消毒レベルを向上させる効果が確認されています。カルバペネム耐性菌に対しては、直接UV照射で99.999%以上、間接照射でも99.99%以上の殺菌効果が報告されています。
紫外線照射除菌の新たな可能性
本研究では、金沢大学附属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科の診察室において、環境表面のサンプリング、および菌の培養を実施し、存在する薬剤耐性菌の種類、分布場所、存在量を明らかにします。また、紫外線照射装置(SEPALIGHT、SARAYA)を使用し、診察室内の薬剤耐性菌に対する殺菌効果を検証します。さらに、紫外線照射装置の使用前に診察を受けた患者様の培養検査から検出された薬剤耐性菌と、環境中から検出された薬剤耐性菌の関連性についても検討します。

本研究結果をもとに、耳鼻咽喉科・頭頸部外科の診察室内における環境表面の薬剤耐性菌による汚染状況および紫外線照射装置の殺菌効果に関するデータを構築し、耳鼻咽喉科・頭頸部外科における感染管理対策の向上に寄与することを目標としています。