研究内容
放射線治療という癌の治療選択肢
放射線治療は、手術、抗癌剤治療、免疫療法と並ぶ「がん治療の4本柱」のひとつです。放射線治療では緻密に制御された放射線を、体外もしくは体内から癌に集中的に照射することで癌を治療します。
強度変調放射線治療や定位放射線治療といった高精度照射技術の普及、併用する薬物療法の進歩などもあり、放射線治療で治せる癌は増えてきています(根治照射)。また、癌によるさまざまな症状、例えば痛みや麻痺、通過障害などの症状改善にも放射線治療は有効です(緩和照射)。癌の初期から終末期まで、癌診療において放射線治療は重要な役割を担っています。
しかし、日本では欧米ほどは放射線治療が普及していません。この傾向は秋田県を含む地方ではさらに顕著です。その背景には、日本の癌治療が外科手術を中心に発展してきたこと、「放射線」に対する市民の誤解や恐怖、放射線治療の提供体制を取り巻く地方の社会事情が国外や都市部と異なることなどが影響していると考えています。

放射線治療の普及・発展のために

①放射線治療従事者向けの活動
・高精度照射技術を担える放射線治療従事者の育成(研修会の開催)
・日本や地方に適合した放射線治療法のエビデンス開発(臨床研究)
・未来の放射線治療を担う医療従事者の人材育成(教育)
②市民向けの活動
・放射線治療を正しく理解し、治療選択肢に挙げてもらう(市民公開講座)
・癌の予防や検診普及のための活動(学校がん教育)
③放射線治療以外の医療従事者向けの活動(地域、病院内)
・放射線治療が可能な病院との連携強化(診療連携、出張講座)
・キャンサーボードやカンファへの積極的な関与
・放射線治療のみでなく癌診療全体を俯瞰できる放射線治療医の育成
将来展望
・日本や地方の社会環境を鑑みた、いまだ解決されていない医療需要(アンメットニーズ)に貢献できる放射線治療法の開発
・超高齢化や人口減少が急速に加速する「2040年問題」を見据えた持続可能な放射線治療提供体制の在り方の探索
これまでの臨床、研究、社会活動
臨床では放射線治療全般を担当し、特に、頭頚部癌・食道癌・肺癌・乳癌・緩和照射・高精度放射線治療を専門にしています。また、Interventional Radiology(画像下治療)というカテーテルなどを用いた治療も行っています。
研究では、骨転移に対する緩和照射前の適切な画像評価法、食道癌に対する放射線治療法の評価や予後因子の解明などを行っています。また、放射線治療とInterventional Radiologyを組み合わせた治療の研究にも取り組んでいます。(講演、論文などの発表歴:ResearchMap)
放射線治療の普及のための社会活動にも積極的に取り組んでいます。秋田県内の放射線治療従事者を対象とした研究会(秋田県放射線治療セミナー)や、外部講師として中学校や高校のがん教室での授業、一般市民を対象とした公開講座の開催やYOUTUBEでの講演などを行っています。


