研究内容
ファインバブルって?
ファインバブルとは、直径1mm未満の非常に小さな泡のことです。約30年前から日本を中心に、発生方法や応用技術の研究が進められてきました。最近では、シャワーヘッドやお風呂、洗濯機など、私たちの生活の中でもファインバブルを活用した製品を目にする機会が増えています。この微細な泡には、いくつかの優れた特徴があります。たとえば、気体を水に効率よく溶かすことができるほか、泡の表面に汚れを付着させて取り除く力にも優れています。こうした性質により、洗浄や水質改善など、さまざまな場面で活用されています。
なぜ超音波?
ファインバブルの利点を活かした優れた関連商品が多数市販されています。ただし、泡を発生させる液体は、ほとんどが水や海水に限られています。これは、ファインバブルを作るにはポンプなどで液体を高速に送る必要があり、高温・高粘度・腐食性のある液体ではその処理が難しいためです。そこで私たちの研究室では、超音波を使ってさまざまな液体中にファインバブルを発生させる技術の開発を進めています。超音波とは非常に速い振動のことで、この振動を液体と気体の境界に伝えることで、境界面が揺らぎ、小さな泡が飛び出すようになります。この方法では、ホーンと呼ばれる超音波振動体の先端を液体に浸すだけで泡を発生させることができ、ポンプによる送液が不要なため、水以外の多様な液体にも応用可能です。
色々な液体にファインバブルを発生させると何ができる?
実は、パンやアイスクリームなどの食品、スポンジや断熱材などの材料には、細かい泡を含むものが多くあります。ただし、これらの加工前の材料は水のようにさらさらしていなかったり、反応性が高かったりするため、一般的な方法ではファインバブルの発生が難しい液体がほとんどです。そこで本研究室では、超音波を使ったファインバブル発生装置を開発し、こうした扱いにくい液体にも安定して泡を導入できる技術を確立しました。この方法により、従来は困難だった液体にも泡を加えることが可能となり、新しい機能や構造の創出につながる可能性が広がっています。
【応用例】
- 🔩 溶けた金属に泡を加えて発泡金属を作ることで、材料の軽量化や衝撃吸収性の向上を実現。
- 🍯 ハチミツや🥚卵に多くの泡を含ませることで、素材そのものや加工食品に新しい食感を生み出すことに成功。
今後もさまざまな液体への応用を進め、泡がもたらす新たな価値の探求を続けていきます。
ファインバブル研究の未来に向けて
ファインバブルの研究は、これまで日本が世界をリードして進めてきました。しかし近年では、その有用性に注目した多くの国々が急速に追い上げてきており、競争が激化しています。私たちの研究室では、水以外の液体にもファインバブルを発生させるという独自の手法を用いており、幅広い分野への応用が可能で、暮らしや地域社会への貢献が期待できる技術です。一方で、さまざまな液体への適用を試みる中で装置への負荷が大きく、競争的資金ではまかないにくいメンテナンスや修理などの保守費用の確保が難しい状況です。さらに、競争的資金は毎年必ず採択されるわけではないため、安定した研究の継続には課題があります。円滑な研究活動のため、皆様からの温かいご支援を心よりお願い申し上げます。