研究内容
病理学的解析から、難治性肝胆道系疾患の病態を解明する
1.あなたが研究を通して成し遂げたいことはなんですか?
肝臓や胆のう、胆管に発生する「肝胆道系疾患」は治療が難しく、いまだ原因や病態が不明な点が多くあります。こうした疑問を解決するために、肝胆道系疾患の病理検査や病理解剖で得られた検体を解析し、難治性の病態解明に挑んでいます。
特に、中高年女性に多く見られる自己免疫性肝疾患「原発性胆汁性胆管炎(PBC)」と、膵癌と同じく早期診断が難しく、予後不良の「胆道癌」の早期病変について、病理組織学的な手法を中心に解析を行っています。
これらの研究から得られる結果は、疾患の新たな診断方法や治療方法の開発につながり、難治性肝胆道系疾患の早期診断、早期治療による予後改善に貢献できると信じています。
2.どのようなアプローチで実現しようとしていますか?
この研究では、原発性胆汁性胆管炎(PBC)や脂肪肝炎などの非腫瘍性疾患、そして肝内胆管癌などの腫瘍性疾患といった「肝胆道系疾患」を対象としています。
私たちは、金沢大学の人体病理学や関連病院などで行われた病理検査や病理解剖で得られた検体を収集・蓄積し、解析を通じて病理学的な研究を進めています。
その中で、私たちはPBCの胆管細胞に「細胞老化」が起きていることを世界で初めて見出しました。細胞老化は、加齢性疾患にも深く関連する細胞機構で、老化した細胞は、SASP(ケモカインなど)の分泌によって、炎症や線維化を引き起こします。また、細胞老化は、発癌や病気の進行にも関係しており、実際、胆管癌の前癌病変でも胆管細胞の老化が見られます。
そこで私たちは、細胞老化に焦点をあて、肝胆道系疾患の病態形成における老化細胞の発生状況や病態形成における役割を解析しています。最終的には、老化細胞を手がかりにした新しい早期診断法の開発や、老化細胞の制御による新しい治療法の開発を目指しています。
3.あなたが取り組む研究課題はなんですか?
本プロジェクトでは、難治性の肝胆道系疾患の中でも、特に「原発性胆汁性胆管炎(PBC)」と「胆道癌の早期病変」に注目し、細胞老化の関わりを明らかにすることを目指しています。
私たちは、肝胆道系疾患の発症や進行の中で、老化細胞がどのように発生し、どのような役割を果たしているのかを解析しています。そのうえで、老化細胞を手がかりにした新しい早期診断法の開発や、老化細胞を制御することでの新しい治療法の開発を進めています。
解析手法としては、免疫染色や多重免疫染色を軸に進め、将来的には、空間的単細胞解析など先進的な手法も取り入れていく予定です。また、組織透明化技術を用いることで、老化細胞の分布や胆管・血管の立体的な構造を解析します。
さらに、病理学的な解析で得られた知見をもとに、培養細胞やモデル動物を用いて、老化細胞の働きや制御方法を検討し、将来的な治療法の確立につなげていきます。
4.研究費サポートのお願い
細胞老化に焦点を当てたこの挑戦は、治療が難しい非腫瘍性・腫瘍性の肝胆道系疾患に対する新しい早期診断法や早期治療法の開発を目指すものです。
現在進めている病理形態学的、分子病理学的な解析には、研究試薬の購入など多額の資金が必要です。特に、今後予定している空間的単細胞解析には、1,000万円規模の資金が必要となります。
みなさまからのご支援は、多重免疫染色や組織透明化に必要な抗体や試薬、画像解析ソフトなどの購入に大切に使わせていただきます。さらに、十分な支援をいただければ、高額な空間的単細胞解析にも挑戦し、応援してくださるみなさまと共にこの研究をさらに前へ進めていきたいと思います。
どうか、温かいご支援をよろしくお願いいたします。