研究内容
気候変動が変える、海の災害
2018年の台風21号では、大阪湾で記録的な高潮が発生し、関西空港が浸水しました。冬の北日本、日本海では、急発達する爆弾低気圧による高潮・高波が沿岸のまちに来襲します。地球温暖化がこれらを急激に変化させるいま、「次にどの海岸が、どれほどの高潮・高波に襲われるのか」を、あらかじめ見通す科学が求められています。
空と海をつなぎ、災害を「予測できる」ものに
私は、空と海をまとめて解く"海の天気予報"のような「大気海洋波浪結合モデル」を軸に、台風や爆弾低気圧がもたらす高潮・高波を高い精度で予測する研究に取り組んでいます。研究は、次の4つの柱で進めています。
・気候変動影響評価:温暖化が将来、台風や高潮・高波をどう変えるかを見積もる
・AIによる沿岸災害予測:機械学習を活用した新しい予測手法を開発する
・確率的な海岸線予測:海岸線(汀線)が長期にどう動くかを確率で示す
・沿岸災害デジタルツイン:これらを統合し、現実の海岸を計算機の中にそっくり再現した"デジタルの双子(仮想の実験場)"で災害を試す
この研究が社会にもたらすもの
精度の高い予測は、防潮堤の設計や、災害に強いまちづくりといった「適応策」の科学的な根拠になります。どこに、どれだけの備えが必要かを見通せれば、限られた予算を効果的に使い、将来の被害を減らすことにつながります。
能登の現場から
私は、海岸工学委員会の能登半島地震津波調査グループに事務局として加わり、発災直後の1月3日、先遣隊として現地に入りました。飯田港では、津波によって防波堤がずれ動き、海に近い家から順に被害が濃くなっていく――その境目がはっきりと刻まれていました。津波や地殻変動の痕跡は、時間とともに失われていきます。私たちは記録が消える前に、初期の段階から繰り返し現地を歩き、何がどこまで起きたのかを克明に残してきました。この一つひとつの記録が、次の災害から沿岸のまちを守る備えにつながります。
次世代の研究者とともに
これらの研究は、研究室の学生たちとの日々の挑戦のなかで進んでいます。実際のデータと格闘し、モデルをつくり、災害の仕組みを解き明かす経験は、次の時代の防災を担う人材を育てる場でもあります。
ご支援のお願い
沿岸防災の研究には、膨大な計算とデータ解析を支える環境が欠かせません。皆さまのご支援は、たとえば次のような形で活かされます。
・月1,000円(年1万2千円)… 予測を支える計算・データの基盤を支える
・1万円 … 大規模なシミュレーションの計算を約1週間分
・6万円 … 学生1人が国内学会で研究成果を発表する費用(1回分)
・30万円 … 学生1人が国際会議で世界に発信する費用(1回分)
海の災害を「予測できるもの」に変え、沿岸の暮らしを守る研究を応援してください。どうぞよろしくお願いいたします。