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医療

能登半島地震の教訓を次へ活かす:地震災害における患者の移動や診療情報等を可視化

米澤 宏隆 特任助教 ヨネザワ ヒロタカ
所属
金沢大学 救急科/整形外科
研究分野
救急医学
キーワード
災害医学、骨軟部腫瘍学、骨粗鬆症、外傷

 令和6年元旦に発生した能登半島地震では、多くの傷病者が発生し、被災した能登地域だけでなく、非被災地域である金沢市以南地域の病院にも患者が分散されました。その結果、1月中旬には非被災地域の医療機関は、これ以上被災地からの患者を受け入れられない状態に陥り、「医療福祉非常事態宣言」が発出。被災と関係のない患者も十分な医療を受けることが困難な状態となりました。

 同様な課題はこれまでの災害(熊本地震等)でも発生し、なぜこのような事態が起きたのか、事実の検証がなされていません。地震災害が多い日本において、災害後の検証は非常に大切なプロセスです。私たちは、この課題に真摯に向き合うべく、アカデミアの立場から、志を一つにする者たちと本プロジェクトを立ち上げました。

 本研究では、能登半島地震災害における患者の搬送や診療情報を収集し、地域医療の全体像を明らかにすることを目指します。そして、将来起こりうる南海トラフ地震などの大規模災害対策に役立てるためのエビデンスとして社会に還元していきます。
 安心・安全な日本の医療体制のため、みなさまの温かいご支援を心よりお願い申し上げます。


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米澤 宏隆 特任助教 ヨネザワ ヒロタカ
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研究内容

令和6年能登半島地震に関連する患者の診療情報を 収集する後方視的多施設調査研究

1,あなたが研究を通して成し遂げたいことはなんですか?

 令和6年元旦に発生した能登半島地震(M 7.6、死者数634人(令和7年8月5日時点))では、多くの傷病者が発生し、被災した能登地域だけではなく、非被災地域である金沢市以南地域や県外の病院にも患者を分散し、傷病者の治療が行われました。

 その結果、1月中旬には、非被災地域(金沢市以南)の医療機関は、これ以上被災地からの患者を受け入れられない状態となり、「医療福祉非常事態宣言」が発出されるという課題に直面しました。被災地からの新たな患者の受け入れが困難なだけではなく、被災と直接関係のない患者が、医療機関で十分な医療を受けることが難しい状態になりました。

 災害医療は、急性期の大規模病院だけで完結するものではありません。後方支援となる病院・施設(バックベッド)との連携が不可欠です。そこで、医療圏内の各機関が、それぞれの機能と役割を生かしながら、相互に連動することが重要となります。

 今回の能登半島地震の教訓を、将来の大規模災害への備えとするために、本研究では、能登半島地震で各医療機関の対応がどのようなものだったのかを調査し、事実を明らかにします。そして、そのデータに基づき、今後の災害対応がどうあるべきか、検証していきたいと考えています。

2.どのようなアプローチで実現しようとしていますか?

 私たちの研究グループは、能登半島地震における地域医療体制の実態を明らかにするため、近隣の20床以上の医療機関(約300施設)や高齢者入所施設(約1,200施設)にアンケートや、現地取材などを行い、患者の診療記録などの情報を収集します。多様な施設を対象とした網羅的な調査を実施したいと考えております。

 調査では、発災後どのようなタイミングで、どの医療機関・施設において、どのような診療行為等が行われ、どれくらいの期間を必要としたのか、について情報を収集し、令和6年能登半島地震における地域の医療体制の全体像を明らかにしたいと考えております。

 最終的には、将来起こりうる南海トラフ地震をはじめとする大規模災害対策を講じる際に、参考になるような資料・エビデンスの作成を目指しています。

3.あなたが取り組む研究課題はなんですか?

 本研究では、北陸全域の20床以上の病院、および高齢者入所施設の協力を得て、今回の能登半島地震における患者の移動実態を把握し、可視化したいと考えております。
この作業は、行政機関では調査するスキームがない点や、さらには県境を越えている(少なくとも県レベルでの対応が難しい)広がりを持つことから、調べることが困難です。そのため、私たちアカデミアしか調べることができない領域であると考えております。

 そして、最終的な結論としましては、大きな災害が発生した際に、手術ができるような医療機関(例:急性期の医療機関)で被災者を円滑に受け入れるためには、一つの医療機関だけではなく、地域全体で災害医療を支えるだけのバックベッド(後方支援病院)の機能と協力体制が大切であるという点を明示したいと考えております。

 また、副次的な解析として、例えば、「人的支援の配置が適切であったか」、「患者の受け入れに施設間で偏りがなかったか」、といった観点からも調査したいと考えております。

4.研究費サポートのお願い

 私たちの研究では、「まず事実を正確に確認すること」を何よりも大切にしています。
前述のように、行政機関では地震災害後の医療体制について、十分に事実を把握することができておりません。これは、これまでの災害(熊本地震等)でも同様であり、事実を調査し、検証するスキームがないため、やむを得ないことと思います。

 しかしながら、地震災害後の検証は非常に大切なプロセスです。行政機関でできなければ、我々アカデミアの立場のから、「誰も行っていない事実の検証」を成し遂げようと、志を一つにする研究者たちが本プロジェクトを立ち上げました。

 研究費の使途は、主に医療機関や高齢者入所施設へのアンケートや、往復ハガキ等の送付のための通信費、意見交換や取材など現地に赴くための交通費、そして、将来的な学会発表のための旅費や、論文投稿に必要な英文校正費とさせていただきたいと考えております。本助成金が私たちの活動を力強く後押ししてくれるものと信じております。

 地震災害が多い日本において、この研究は、安心・安全な日本の医療体制の構築のために欠かせないものです。どうか、私たちの挑戦にご理解とご支援をよろしくお願いいたします。